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2005.05.11

JR西日本の組織崩壊

JR西日本について、ずっと気になっていて
纏めようと思いながら、忙しくて時間が取れず、
既にずいぶん時間が経ってしまった。
メディアから流れてくる情報から最近
感じるのは、事故の科学的な分析は進んで
きたものの、組織的な分析は依然進んでいない
なあということだ。

JR西日本は、企業風土に問題があったことを自ら
認めていて、改善につとめると言明しているが、
実際どのように改善するのだろう。
運輸交通省の事故調査委員会が技術工学的な
視点から追求するのは正しいことだが、
報道は組織風土の問題には問題たたきに終始
しているが、JR西日本の組織風土のどの点を
どう改善していくべきなのか、そこにメスを
入れないといけないのではないか。

事故の原因として運転士の適正云々の話があり、
私も最初そう思ったが、そもそも同じミス
(ブレーキ制動の遅さ)を新人が繰り返すとすれば
それは、指導する側の問題であって、適正云々を
持ち出すのは早すぎるのではないか。
落ちこぼれとして使い捨てようとしていたのでは
なかったかと感じる。
また、ミスというより過酷で不安定な業務もあって
集中力が薄れていた可能性も指摘されていた。
労務管理上の問題も考えられる。

ダイヤどおりの運行への異常な執着という組織の
価値観、目指すべき視線・価値のプライオリティの
間違いが明らかになってきて、運転手個人の過失
というより、組織の問題だということがわかった。
そこで、JR西日本のHPを見てみたが、鉄道会社か
ら脱皮しようとしているというか、時代に適応しようと
経営陣は努力していることは理解できた。第一印象
はIR株主向けの情報は充実しているなあと思った。
中期経営目標『チャレンジ2008~お客様とともに~』
では非の付けどころのないもので、行動計画の最初に
「お客様目線の徹底」への挑戦、とあり、
「安全安定輸送の確保に対し最重点で取り組み、
これを徹底します。そのため、輸送設備の維持・
更新、大規模災害等に対する対策を進めるとともに、
社員の教育等ソフト面での施策に引き続き取り組む」
と書かれており、これが文字通り目標にされていれば
今回の事故は避けられていたであろうと思われた。
また、JR西日本の幹部経営陣は勉強熱心で、外部
講師を呼んで組織改革を色々進めていたようで、
特に、いすゞ自動車の元人事部長が講演した、
いすゞ自動車の風土改革」は読んでいて大企業病
に対する処方箋として大変参考になった。
なぜ、折角こうした提言を生かせなかったのだろう。

HPを見ての印象として、やや秀才的というか
時代に迎合した金太郎的な理念だなと思われた
会社としてのお題目は立派、利益も出していた。
民営化も成功。事故の発生を事前に予想することは
きわめて難しかったろう。

なぜ現場は崩壊していたのか。
事故当日にボーリングに興じていた当事者達は不見識
だが、彼らはひょっとすると、何らかの応援指示が
あれば迷い無く駆けつけたのではなかったか。
しかし、経営層が全て情報を握り当事者意識を持つこと
ができない職場風土ではなかったか。つまり、ひょっと
すると現場は普段から幹部の意向にしらけきっていたの
ではないかと感じられた。

いわゆる国家公務員のキャリア・ノンキャリの確執
がJR西日本にもあったのではないか。
高卒の運転士・一流大を出た幹部達
上は下を軽蔑し、下は上を批判的に見ている。
支配する側・される側に分離した階層組織の密室にあって
支配される側は搾取され機械のように感情をすり減らし
利益追求・コスト削減という名の下に現場に低賃金、
人減らしが上からの押し付られる。
そうして、一番弱い組織の末端部分からクオリティが
崩壊してしまう。
そういう組織では現場の情報が上に上がっていかない
ためどうしてもクオリティを磨くことができない。
トヨタの強さは現場と経営層の視線が同じこと。
際限ない無駄取りを経営層が理解していること。
クオリティを求める現場責任者と、それを維持できる組織
それが日本の製造業の競争力を維持している。

私は、経営の質について例えば日本経営品質賞
などももう一度引っ張り出して見直してみたが
結局、経営の健全度・健康度を計るには、
何か特別な指標を立てなくても
クオリティの問題を起こしていないかどうか、
クオリティの改善が進んでいるかという点を
見ればよいのではないかと思えてきた。

ホリエモン的な株主原理主義では会社経営は歪が
出てきてしまい、こうした会社はどこかでクオリティ
の問題を引き起こしてしまう。
逆に言えばクオリティを追求するためには組織が健全
でなければならない。また、経営が株主だけでなく
(つまり利益だけでなく)施策として社員の共感を
得ていなければ難しいと思う。

企業だけじゃなく官公庁も含めて組織が二極分化して、
クオリティの問題を抱えている企業は珍しくは無いと思う。
日本だけじゃなく多くの外国企業にもこの兆候は見て取れる。
だから、マグダラのマリア同様、誰がこのJR西日本を批判
できようか・・・と私は思ってしまう。

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